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執筆者の写真mirainohyakusho

第五回 地産地消を超えるローカル

更新日:2021年9月16日



 今回のゲストである森脇菜採さんは、千葉県柏市で”ろじまる”という地産地消型のマルシェを営んでいる。自身が日々食べるものがどこで、どのように作られるのかということに強い興味をもった菜採さんは、自らも農業を経験し、農産物に関する知識を増やしていった。農家や作物と距離が縮まったことで、彼女はより多くの人に、信頼のおける地元の作物を、より簡単に手にしてほしいと思うようになった。こうして始めた”ろじまる”は、八百屋であるだけではなく、消費者と農家が直接つながることのできる交流の場ともなっている。



柏市との出会い

 たまたまブログで見つけた手賀沼の自然豊かな写真。この一枚の写真が柏市手賀沼との出会いとなる。首都圏からの行きやすさも相まって、すぐに遊びに行った。柏駅周辺は栄えているのにもかかわらず、少し足を伸ばして手賀沼まで行くと、そこには手つかずの自然が残っている。直売所にも、様々な種類の地元の採れたて野菜が並んでいた。市街地と田舎のバランスが絶妙で、初めて訪れたこの時から、地産地消のポテンシャルを感じていたという。「街としての大きさがちょうどよくて、ここなら街の中で農産物を回して、人と物とお金が上手く循環するという理想を、現実にすることができるのではないか、とぼんやり妄想してた。」


農家ではなく、八百屋を選んだ

 農家に憧れ、自らも農作業を手伝っていくうちに、仕事としての農業は、家庭菜園とは全く違うことに気づく。植物相手の作業は、自分のエゴやペースでは進められない。太陽や天気、季節に、人間が指示をすることはできないのだ。自分ではできない仕事だと実感すると同時に、違う形で農家と同じ目線に立ちたいと思うようになった。

 柏市に移住した2年後、2011年に起こった大震災で、柏市がホットスポット(局所的に放射線量が高い場所)となった。だれも正解が分からない状況の中、農家と消費者をつなぐ立場であった森脇さんにとって、震災は安心して食べれるものを選ぶ基準を考え直すきっかけとなった。農家の覚悟を目の当たりにして、外からではなく中の人間として、その土地と結びつく決心を固めた。



”日常の中の一部になるために”

 スタート当時のろじまるは、毎週水曜日に1時間だけオープンするマルシェだった。イベント的に開催するマーケットよりも、少ない時間であれ定期的にオープンすることで、日常の一部になることを目指していたという。そこで、地元の飲食店の人をターゲットとし、地元の作物を地域内で循環させるルートを構築すると、自然と地元の人同士のつながりが増えていった。消費者と生産者だけではなく、農家同士やシェフ同士の交流ができたことは、想定外の嬉しい結果だった。路地裏で始めた小さなマルシェは、口コミで予想以上の反響を呼び、行列のできるマルシェに育っていった。


“「中途半端」だから、間にたてる”

 マルシェのスタイルから、農家から野菜を買い取って消費者へ届ける、いわゆる八百屋へ転身すると、受け身ではないコミュニケーションがより必要となった。生産者と消費者、どちらの意見にも耳を傾けないと、店は成り立たない。そのバランス感は、自身の”中途半端さ”が役に立っていると語った。「農家さんを応援したいし、尊敬しているけど、わたしは農家ではない。食に興味があって、ずっとその道の仕事をしてきたけれど、シェフでもない。要するに、何者でもないんです。どこも中途半端だから、間に立つ役割を担えるのかもしれない。」


“食を通じて、共感の連鎖をうみたい”

誰しもが避けては通れない行為の一つが、”食”だ。森脇さんは、自らが体感した、感動や知識を共感させるのに最も適したツールが、食であると信じている。実際に彼女が足を運んで、関係を築いた農家さんの作物の味、努力を、それを食べた時に体感してほしい。そんな体感の共感の連鎖を生むための場所として、”ろじまる”は存在している。





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